F1にタイヤを供給しているメーカー「ピレリ」から、来シーズンは現在供給している5種類のドライタイヤ(晴れの日用タイヤ)に、2種類を加えるとの発表がありました。
■F1になじみの少ない方へ解説
簡単にまとめると、現在(2017年シーズン)では、ドライタイヤは、柔らかい方(耐久性はないが速度は速い)から硬い方(耐久性はあるが速度は遅い)へ、以下の通り供給されています。
(柔らかい)ウルトラソフト>スーパーソフト>ソフト>ミディアム>ハード(硬い)
そして、各ドライバーは決勝レースで必ず2種類のタイヤを使わないといけないこととされています。レース中にタイヤ交換を必要とし、得意のタイヤでリードしていたマシンが後半不得意なタイヤになり、その逆のマシンに追い上げられてバトルになる・・・というようなシーンを作り出す目論見があります。
また、各ドライバーは、あらかじめ決められた本数の中でタイヤの組み合わせを自由に選べるので(一定の制限有り)、各ドライバーごとに戦略の違いが生じ、コース上での追い抜きが発生する、という狙いもあります。
今回の発表は、現在の選べるタイヤ5種類に、最も硬いタイヤ(スーパーハード)と最も柔らかいタイヤ(ハイパーソフト)を増やすというものです。
■ピレリの決断を支持
今回、ピレリが良く決断したな、と思います。というのは、タイヤの種類をたくさん用意するということは、それだけのタイヤを設計し、なおかつドライバーからのリクエストに応えられるように、必要な本数を生産・用意しなければならないからです。簡単に言えば、大きなコスト増になります。
もともと、タイヤメーカーは貧乏くじを引かされることが多く、「壊れにくい安全なタイヤ」を作れば、ドライバーから「速度が出ない面白みのないタイヤ」と酷評され、F1運営委員会から「走っているうちにタイヤの性能がだんだんと劣化するようにして、コース上で劣化し始めたタイヤを履くマシンとフレッシュなタイヤを履くマシンとのバトルが見られるようにしてくれ」というリクエストが出され、これに答えたところ、今度は「タイヤの性能が落ちないように気を付けて運転しなければならず、車の性能を最大限に引き出せない」と責められます。
こうした経験の中から、「選べるタイヤの種類を多くして、その違いによりバトルを演出する」、というのがピレリの出した答えなのかもしれませんね。
現在は、レースごとにコースレイアウト等からタイヤにかかる負担等を考えて、ドライバーが選べるタイヤの種類は、F1運営委員会から3種類のドライタイヤが指定されます。コスト上の問題も大きいとは思いますが、できれば指定種類を4種類以上に拡大してくれると、各ドライバーの戦略もさらに分かれて、より面白くなると思います。
ピレリの決断がうまくいくかどうかはわかりませんが、僕は、今回のピレリの決断をポジティブな挑戦と支持して、どうなるか楽しみにしています。